【即興物語】南の星と命
タロットカードと言葉たちにインスピレーションをもらって
即興でお話を書きました。
「太陽の光と蝋燭の光はどちらの方が強いんだろうね」
わたしの小さな娘は、わたしを見上げてそう言いました。
「夜、真っ暗な中で、蝋燭の光はわたしたちを照らしてくれるでしょ。
太陽の光は夜になると突然いなくなってしまって、なんか、見捨てられたような気がしちゃうんだよね。」
わたしは娘のその言葉に少しハッとしました。
どうして彼女はこんなに小さいのに、そんな言葉を使うのかしら。
不思議に思っているわたしの目の前に、ふわふわのカプセルに入った子犬が現れてこちらをじっとみています。
子犬が何か喋るんじゃないかと、わたしはその子を見つめてみましたが、その子は何も言いません。
ふわふわのカプセルに入った子犬?
わたしの頭は混乱していましたが、なんとなくそれが正しいことみたいな気持ちになって、少しだけ目を閉じて考え事をしようと思いました。
「ママの心の中には、一体どんなお日様がいるの?」
「どんなお日様って、わたしのお日様も、あなたのお日様も、同じお日様でしょう?」
笑いながら話すわたしの目の前にはまだ子犬の姿がありました。
その瞳はキラキラっと濡れていて、わたしはその子のことを知っているような気持ちになりました。
これは、寝る前にわたしが娘に話していたお話の続きなんじゃないかな。
夢の中の出来事なんじゃないかなと思いながら目を閉じていると、重たく暗い闇に包まれ、わたしはいつの間にか眠ってしまいました。
夢の中で見た光は、どこかここではない別の場所のようでした。
なぜそう思ったかというと、そこに太陽がなかったから。
太陽がないのにその場所は明るくて、なぜか太陽に似たオレンジ色の光に包まれています。
だけどわたしにはそこに太陽がないことがわかっていました。
わたしはその星から地球がどこにあるのか見つけたいと思いました。
大きな木を超えて、そこにある梯子を登り、さらに大きな木の上に立ってみると、地球のような、大きなガラスのボールのような星が見えます。
そこにわたしの娘の気配を感じて、これは絶対に地球なんだと確信を持ちました。
わたしがイメージしていた地球とは違って、そのまあるい星はガラスのボールみたいな見た目をしていました。
太陽の光は強く反射をして周りの星たちを照らしています。
わたしが感じているこの光は、太陽が地球に反射をして周りの星に広がった光だったのです。
だから厳密には太陽の光なんだけれど、地球のガラス玉を反射した光だったから、少しチグハグなような、反対しているような感じを覚えたのかもしれません。
わたしは地球のことを思い出そうとしました。
小さなわたしの娘はその星で「たくさん楽しいことを一緒にしようね」と張り切っていました。
わたしは彼女に賢くなってもらいたいと思っていましたが、それはわたしが賢くなりたいと思っていたのかもしれません。
なぜなら彼女はすでにとても賢くて、わたしの知らないことをよく知っていて、まるで地球にわたしよりも前からいたような感じで話すことがとても多かったから。
彼女はわたしを通ってここにやってきたけれど、わたしはその彼女を通してどこか違う場所の記憶を思い出しているような感じがしています。
わたしは夢から覚めたら、このお話を本に書こうと思いました。
わたしの娘は絵本が大好きだったから。
本を読んであげると、彼女はいつも笑いました。
いつも何かを思い出すように絵を見つめながら、わたしの声を聞いていました。
わたしの小さな娘はいつもわたしのそばにいて、わたしに何かを伝えようとしているみたいでした。
夢の中でわたしは少し泣きました。
なんだかとても懐かしいような気がして、この場所にずっといてもいいんじゃないかなという気がしてきて、でもそれをするわけにはいかないという体の強い反射も感じながら、とても複雑な時間を過ごしていました。
夢の中だとは思えないような複雑な時間をわたしは何時間も過ごしたように思います。
夢から覚めると、わたしの目の前に小さなわたしの娘とふわふわのカプセルに入った子犬が浮かんでいます。
「ママ、あの星の太陽はどうだった?」
娘が無邪気に聞いていて、子犬はわたしを見つめています。
「あの星には太陽はなかった。
鏡みたいな地球が反射をさせた太陽の光だったから。
それは同じもののようで、似ているもののようで、全然違うんだって思った。
わたしとあなたも、同じもののようで、似ているもののようで、全然違う人間だった。
でも、あなたはここにいて嬉しいなってママが思えることが今すごくいいなあって感じてるんだよね。」
「あなたは賢い子だから、ママが言っていることがわかるでしょう」
娘はニッコリと頷きました。
そして子犬が入ったふわふわのカプセルが少しひび割れて、中から焼きたてのパンのようなかおりがして子犬が外に出てきます。
子犬はわたしの娘のところにゆっくりと歩いて行ってわたしの娘はその子を抱きしめます。
「あったかいよ」
娘はわたしの方を向いて言います。
「それにいい匂いがする」
その子犬は昔わたしとあの星で遊んでいた子犬だったかもしれません。
わたしはそれを思い出そうと少し目を瞑ってみましたが、しっかりとした記憶を引き出すことはできませんでした。
だけどなんだか確実にそんな感じがするのです。
なぜかそんな感じがする。
わたしの心の中に太陽が入ってきたみたいに暖かい。
娘とわたしと子犬は抱き合って、「また会えてよかった!」と言います。
また太陽の光のもとにやってこられてよかった。
また本が読めてよかった。
この地面を踏むことができてよかった。
そうやってわたしも、わたしの娘もこれから懐かしい人たちに出会うのかもしれません。
その人たちはわたしたちの太陽で、だから、一緒にいるとホッとして、「よかったな」と思える人たちかもしれないのです。
そんな映画をわたしと夫は眺めていました。
「この映画ってなんかとても変だったけど、わたしは結構好きだな」
そういうとわたしの夫はわたしに暖かい毛布をかけて、もうそろそろ寝なさいと言いました。
わたしの大きなお腹の中で太陽の光が暖かく光っているのを感じます。
もうすぐやってくるあなたはいつかわたしと一緒に笑っていたあの子かもしれない。
あの時は会えなかったけど今わたしはとても楽しみに、あなたに読んであげる本を探している。
わたしは今日昼間外に干しておいた太陽の香りのするモコモコの布団に入り、お腹の中で動いている小さい、わたしとは別の命とお話をしながら夢の中で大きな木の星に旅行をすることができますようにとお願いをして眠りにつきました。
おわり