「貧乏」に含まれる特有の切なさ。
アパートへの帰り道、寒い空気に触れること。
狭いベランダからのぞく、隣の家の庭。
冷房がきいていない部屋で、ふたりきりで過ごす夕方。
たくさんの人がそこに美しさを見出して歌詞として歌ってきた「貧しさ」。
「貧乏」「お金がない」という状況がなんとなく素敵なのは、
きっとそこに愛しか残っていないから。
それから絶大な若さによる、未来への希望。
好きなものが食べられなくても、贅沢できなくても、一緒にいれば楽しい。
むしろそのなにもなさからは「ふたりきり」が強調されて、まるで世界にたったふたりしかいないよう。
すきま風だらけの部屋の中、ベッドで手をつなぐ。
わたしたちは愛しか見つけることができなくて、心はほっと満たされる。
涙がでる。
未来への期待と、いま見出した幸せと、ちょっとだけ過去への後悔。
みんなみんなそれを抱きしめて、目の前の相手を愛おしく思う。
いつかなくなる今と、同時に存在する今。
どれも胸がしめつけられるように大切なのは、愛しか見つけることができないから。
愛しかないから。
それを今だけ、あなたと。