硝子

世界の見え方は人それぞれ異なっていて

 


わたしの この 見えている色も

 


君の瞳も

 


本当にあるのかわからなくて

 


硝子が割れてしまうことが 不安だ

 


瞬間を感じる連続性

 


わたしは これでいいって 

 


何度も独り言を言った

 


なのに

 


わたしの夢は 何度も 何度も

 


訂正するアラームみたいに 鳴り続ける

 


羽みたいだった数ヶ月前の わたし に

 


戻ることができない

 


忘れてしまった 甘さと滑るような 肌に

 


記憶としての映像だけが

 


残っている

 


こうやって 詩にもならない なにかを

 


書いていたいんだけど

 


いつまでもいつまでも 途中のまま

 


次の景色へうつってしまう

 


そういう ズレたスピード感は

 


気持ち悪くて 嫌い

 


まわりの人間もみんな わたしとは

 


ちがうリズムで スピードで

 


動いているから

 


つかまえておくことができない

 


ゆっくりと 座り お茶をして

 


わたしが 聴きたい音に辿り着くまで

 


待っていられない

 


それは硝子を割るんだ

 


長い長い 言葉を ひきのばす

 


ひきとめる

 


ずっと終わらないように つなぐ

 


宝石の表面が 金属みたいに光った

 


生まれるときにえらんだことが また鳴って

 


耳を引っ掻いている

 


わかったから 放っておいて

 


とわたしに言われたら 切なくて 

 


もうひとりのわたしが 泣いても

 


音が鳴らない

 


ミュートされた 世界 と窓

 


空気の圧を少しずつ 抜いて

 


やめてしまうために

 


この詩は ずっと 途中のまま

 


真空パックにして 5番目の 星に

 


もしくは 生まれ変わる人に

 


つながっていく

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