ずーっと読んでみたかった、カズオイシグロさんの『忘れられた巨人』を読みました!
「記憶」や「忘れること」は最近のわたしのテーマだったので、かなり興味深く読みました。
忘却の霧にかかった世界でみんなが忘れてしまっているんだけど、それを思い出したい人もいれば、そのまま忘れていたい人もいる。
個人(この本では老夫婦)と大衆(国の歴史、虐殺などの過去)ではまたちがうし、忘れないと進めないこともある。
ファンタジーのようで、今の世界も一部こんな感じでは?とも思う。
大切なことが起きたはずなのに思い出せない。
でも、だから平和に暮らしてる。
おすすめだけど、イギリスのファンタジーやケルトに触ったことない人にはちょっとしんどいかも&カズオイシグロ1作目だとくじけそう。
読者も含んで本ができているカズオイシグロさん、どの作品も好きです。
本を開いた時から、本当に霧がかかったようなぼんやり感に包まれていました。
老夫婦が旅をする中で、いつか起こったはずの大切な「何か」があるんだろうなと
気になって気になってどんどん読み進めてしまいました!
「忘れる」ということについてわたしはずっと考えていて
今書いている小説もそれが一つのテーマで
わたしたちは、時間が繋がってように感じているだけで、本当はこの体は今朝起きた瞬間から始まったのかもしれない。
記憶と思っているものはまとめてダウンロードされたただのデータで
実際にそれが起こったかどうかなんて、証明できないのではないかな?とか考えたりします。
それは余談ですが、この本の中では人々が竜のせいで忘却の病にかかってしまいます。
完全に忘れるのではなく、部分的というかレイヤーの何枚かを忘れているみたいな感じだった。
個人的には夫婦間に起こった裏切りや悲しみ。
大きな視点では国のレベルで起こった戦いや虐殺の記憶。
ミクロとマクロでまた見えてくるものが違うけれど、
「思い出したい」の一方で忘れていた方が都合がいいこと、平和でいられることってあるなあと感じました。
カズオイシグロさんのインタビューもいくつかみて、彼も今書いたようなコンセプトで物語を書いたと話しているのを聞いて、「すごいなあ!」と思ったり。
ちなみに、わたしは作者のインタビューやコメントを見るのが好きです。
海外では特に作者自身が朗読をしたり、作品の解説をすることがよくあります。
人によっては物語を自分自身で楽しみたいという人もいると思いますが
わたしは「物語」がどの人間にも属していないという前提で、
一人の読み手として作者の人がその物語についてどう感じるかが気になります。
わたしは物語は誰かの所有物でも、頭で考えられたものでもないと思っています。
「物語」単体が誰かを通して表に出てきたという感じなので、
つまり「作者」はその第一発見者ということになります。
もちろんその物語気配や構成や詳細はフィルターになる「作者」によって考えられているようにも思えますが、でもやっぱり、大きな部分では「物語」は独立している何かだとわたしは思っています。
なので、その人がどんな風に物語を楽しみ、気配を言葉にしたのかに興味があります。
これについてはまた別の記事で書こうかな。
カズオイシグロさんの作品が好きな方には超オススメの本でした!
わたしのリアルタイムの心のうごきが読めます